RAMIの形而上学入門

売れてない俳優目線の哲学論

短編小説〜漂う、そこに。そこから、漂う〜

マイクチェック、ワンツー、ワンツー。

こんばんわ、俺はベニマンジュウクラゲ。

どうしてこんな間の抜けた名前をしているか、俺が何を食べているか、なぜ今こうして気持ちを伝えられているのか、そんなことはどうでも良い。

ここは深海。そう言うことだ。君たち人間はまだ何も知らないし、俺たちも君らをよく知らない。そう言うことだ。

少しここの話をしよう。

君らじゃ想像できない未知の世界。

手始めに、ここは真っ暗だ。太陽の光はほとんど届かないからな。

きっと耐えれないだろう。太陽の光が届かないことがどんなに暗く、孤独なことか。

そしてまたここは恐ろしく寒い。これも耐えれないだろう。

冷たくて、暗い。無限とも取れるこの闇の中、俺はゆらゆらと漂う。

漂う。ゆらゆらと。羨ましい?そんな事はない。

君ら人間は本当に何も知らない。まず俺は漂いたくて漂ってなんかいない。ただそうしているだけだ。君らが寝て、起きて、ご飯を食べて、寝るみたいにだ。

それを羨ましく思える奴らはどれだけいるのか。

あと、ストレスだってある。君ら人間の生きていると辛いことがあるというのと同じ、俺ら深海に住むものとして、ベニマンジュウクラゲとして生きてて辛いことはたくさんある。

君らが毎月の携帯代の高さに苛立ち、税金に不満を抱くのと同じようにだ。

それでも俺は漂う。この暗くて冷たい場所で。

君たち人間も漂う。その暗くて冷たい場所で。

俺は漂う。明るく、希望に満ちた場所で。

君も漂う。明るく、希望に満ちた場所で。

俺たちは遠く、遠く離れているが、同じ地球で漂い続ける兄弟だ。

 

さあ、目をつむって。深海に行こう。

 

 

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