なんでもないけど伝えたい
「私、綺麗?」
美意識。美しくありたいと誰もが思う。
だから君の気持ちもわかるよ。君は綺麗だよ。
ある夜のこと、いつもの帰り道。今日はイヤホンの充電が切れてぼつぼつと歩きながら帰る。Bluetoothもいかがなものか。
そんな時、耳元で声がした。「私、綺麗?」
振り返ると7m先あたりに赤いコートを着た女性がいた。
声の距離感に少し違和感を覚える。
あたりには僕とその女しかいない。2月の寒い風が全身をなぞっていき、街頭の灯が点滅する。そしてまた女が問いかける。「私、綺麗?」
少し考える。女は背が高く、腕や脚は細く、髪の毛が長く、ご時世柄マスクをしていたし、暗くて遠いものであまりしっかりと見えないが綺麗な目をしている。
そして何よりこの世のものとは思えない雰囲気、今までに感じたことのないような冷たさ、寂しさが自分の身体に伝わっているのを感じた。この反応は、、、。恋?
「私、綺麗?」の三度目の問いに間髪入れずに返事。
「はい。綺麗だと思います。」
「これでm」
「僕の好きな映画に『生きろ、そなたは美しい。』という台詞があります。」
「あなたは美しい。僕はあなたのことを何も知らないですが、あなたが美しいということは知っています。この言葉を受け取ってください。あなたは美しい。」
「えぇ、そんなこと言われても」
と困ったように目を大きくして僕を見つめ、それから少し下に目をそらし、気がつくとそこにはいなくなっていた。
彼女はいったいなんだったのだろうか。
わからないが、彼女の最後に見せた反応は紛れもなく生きた反応だった。
「綺麗な人だったなー。」
と呟き、家路に着く。
どうですか?新私訳口裂け女。
全ての人が美しいと思います。生き方で損したくないよね。
美しく生きたいものです。