砂時計より気味が悪い。 chapter.2
カルピスは初恋の味がするらしい。
わからん。
初恋と言うのはどういうものなのか。初めての恋。どこからをそう認識するのだろう。
思い出せば初恋は工藤新一だった気がする。それを除けば、たしか幼稚園で一緒だった女の子だったと思う。幼稚園という初めての社会のなかで君が好きだったあの頃はカルピスのように純粋だった。
初恋のことなどそんな適当な感想しか出てこない。
はずだが、私は二年前の高校二年生の時に初恋の人とデートをすることになった。
今やボタン一つで海外の友達が作れる時代だ。幼稚園の知り合いの連絡先を見つけるなんていとも容易い。そんなこんなで彼女と再会する。
突然の誘いに困惑していた。
幼稚園の初恋の人なんて記憶にまるでない。もう何十年も合ってないのだから初対面と言っても過言はない。初対面の人と1日遊べるほどのコミュニケーション能力は持ち合わせていなかった私はとにかく困っていた。
その日私たちはディズニーの映画を観て、梅田の街を歩いていた。
彼女はギターを弾くらしい。幼稚園の時はギターなんて持ってなかったよなと改めて初対面を感じる。
そんな知ってるようで知らない彼女と歩く梅田はとても新鮮で、ラブコメの波動を感じた。
これが言わずとしれた許婚パターンなのか。。。
ラブコメの王道。忘れていた許婚との再会。
確かに結婚を約束した気がしないこともない。とんでもないことに気づき、一人楽器屋さんで盛り上がる私であった。
そして帰り際、手紙をもらった。
その手紙には今でも好きですとあった。
電車は残り4駅になっていた。電車の走行音が沈黙を許していた。
あの時、返事を曖昧にした。本当に嬉しかった。こんな素敵な言葉をもらえるなんて思ってなかった。なのにあの時は曖昧にした。確か、今好きな子がいる。って返事をした。
嬉しかったことを伝えるべきだったのか、いや、それは蛇足にしかならないし、ただのエゴだ。
それにしても、もっと適切な言葉はあったはずだ。そう思うだけしかできない無力さに反吐が出る。適切な言葉とは。伝えたい想いとは。
流れる時間の中で、言葉を探す。伝えたい言葉は、想いはちゃんとあるから。
結局あの頃好きだった子にも何も伝えれなかった。そのことを思い出す。
to be continued...